第48回研究会

日本地理教育学会第68回大会での研究グループ会合では,数多くの教科書を執筆しまた国際的なESDのモデレーターも務めるThomas Hoffmann氏(ドイツバーデンビュルテンベルク州上級着なジウム地理教員)を招聘し,システム思考コンピテンシーについて,講演およびワークショップを実施した。

 

2016年のIGU-CGEの地理教育国際憲章において示されたように,「地理では,事象や概念の理解に留まらず,パターンやプロセスに注目することで,変動する地球を理解する」ことが重要である。地球上にある現代的諸課題はすべて関連しあっており複雑化している。SDGsを推進するUNESCOでは,持続可能性キーコンピテンシーの筆頭をシステム思考コンピテンシーとしている。その育成に向けて例えば,ダイナミック・システム・ダンス,コンセプトマップアニメーション,ミステリーといった手法がある。ここではミステリーを取り上げワークショップを行う。

 

ミステリーはコンピテンシー志向の学習方法の一つとしてイギリスの地理的思考(Thinking through Geography)として開発されたものであり,生徒が自らの力で複雑な諸事象を理解し構築できるようになるためのものである。

 

生徒はまず,先生が読み上げる2~3のストーリーを聴き理解するよう努める。一見すると全く関係ないように聞こえる話が,実はつながっているのであり,どのようにつながっているのかという謎(だから「ミステリー」)の解明に生徒は挑む。20から25枚程度のカードが渡され,そこに書かれた文章や図表,写真を読み解きながら論理的に話を組み立てることを通じて,謎を解決していく。

作業はグループワークで4人から6人程度が適正規模であり,生徒が他の生徒とコミュニケーションをとりながら論証を進め,アクティブに学ぶことで,地理の専門的な知やコミュニケーションに関するコンピテンシーを育成する。(Hoffmann, nd. Klimawandel in Baden-Württemberg, 1-3)

(本研究会の経費の一部に科学研究補助金「地理教育におけるコンピテンシーの開発に関する研究」(代表者:池俊介,課題番号:19K01192)を使用した)

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Hoffmann_systemic_competence.pdf
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