海外地理教育におけるシステム

(1) アメリカ:環境教育教材PLTアクティビティガイドに示されたシステム

PLTが提唱する環境教育は、①多様性、②相互依存、③システム、④構造とスケール、⑤変化のパターン、の5つの概念をもとに構成される。

システムは「環境、技術そして社会的システムは緊密につながり、相互に作用し合う」と定義され、環境、資源管理と技術、社会の3つの側面との関わりに焦点をおく。

小中学校指導者を対象とした『木と学ぼう』所収、「植物の育ち方」は、②、③、④の概念を展開する活動案である。システムを主題とした場合、環境の側面、「③-1.生物的システムにおいては、エネルギーの流れ及び物質は予測可能なパターンで絶えず循環する」を展開する事例として提示される。

活動案、4種の苗木の成長を光、水、土という3条件のもとで観察活動は、理科的内容にそうものだが、苗木の成長を阻害する要因として、日光や空気など大気、水、ミネラルなど土、植物、動物、さらに人為的条件などとの関わりが問いかけとして展開されるとき、植物の成長は環境。技術、社会システムとの関わりのもとでの探究活動となる。

事例「動きのパワー」は、技術システムとしての交通機関の発達が、地域の環境にどのような影響をもたらしたか。社会システムとしての民主主義は、地域住民にどのような視点、行動を要請するのか。提起される学習活動は、地域の交通システムに対するニーズと利便性、地域の未来に向けての交通システムの計画、提案である。

PLTが提起する環境学習は国語,芸術,社会科など学校での扱いのみならず、林業、行政など地域の専門家をも含む幅広い層に支持される背景として、環境に対する明確な概念を提示することにある。

 

(2) イギリス:ケンブリッジ地理プロジェクトに示されたシステム

学習者向けにシステム理解を記す例として、ケンブリッジ地理プロジェクト「世界の地理 コアブック」(1997) から、単元「地理とエコロジー」における扱いを紹介する。
リード文「自然環境はシステムの集まりとして探求することができる」として、「生命体としての樹木」が自然システム例として示される。他方、人工的なシステムとして、プレーヤー,チューナー,アンプ,スピーカーなどからなる「ステレオシステム」は、要素間がエネルギーの流れで関連付けられたシステムである。
すなわち、
①電源を入れることでプレーヤー等に電気エネルギーが入力され,
②読み取られたCDの情報が電気エネルギーに変換され,
③アンプで増幅された後,
④スピーカーで音エネルギーとして出力されるシステムである。
カラオケなどでマイクをスピーカー部分に向けたときにおこるハウリング現象は,音がマイクからの入力と,スピーカーからの出力を繰り返すことで起こる。
これはシステムの振る舞いとしてのループ,あるいはフィードバックと呼ばれる現象を示すものだ。